甘酒祭1:埼玉県秩父市の猪鼻熊野神社の甘酒祭り(甘酒こぼし)

猪鼻熊野神社近く荒川の橋の甘酒祭りのパネル

甘酒との所縁

猪鼻熊野神社について

猪鼻熊野神社は荒川郵便局近くの国道140号線沿いに位置し、秩父鉄道の終点駅「三峰口駅」からも1.2キロとアクセスが良い。

当社の総本社は熊野三山で、御祭神は伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)です。

当社は東京都、埼玉県、山梨県、長野県にまたがる秩父多摩甲斐国立公園近隣にあります。この他に当公園域で行われる甘酒祭としては小鹿野町の八坂神社(天王社)の間庭の甘酒まつり山梨市の大嶽山那賀都神社の甘酒祭が挙げられます。

 

猪鼻熊野神社の甘酒祭(甘酒こぼし)の起源

江戸時代中期(1730年頃)に書かれた「熊野大神縁記」に『甘酒祭り』の由来が以下のように記されているそうです。

景行天皇(12代天皇)の時代に、ヤマトタケルが『東征』の際に、この地でイノシシを矢で仕留めたが、それは土地を荒らす山賊で、村人は喜び、ヤマトタケルに濁酒を献上した。
ヤマトタケルは山賊を退治できたのは、神々のおかげであると、この地に熊野神社を祭り、矢を奉納した。
その後、奈良時代(730年頃)に疫病が流行し際に、濁り酒を甘酒に変え、疫病流しとして裸で掛け合い、祈願を行ったのがこの祭の起源と言われています。

文久年間(1861~1864年)に一度休んだ際に疫病が流行してしまい、以後、休むことなく延々と続けられているという1300年近くの歴史があります。

甘酒は祭りの前日に麦と米麹で仕込まれる。そして、当日の例大祭の式典前後に悪病除けとして、参拝客に振舞われ、その後、甘酒こぼしの神事の際に裸足にふんどし一丁で掛け合います。

ちなみに、この地域では昔から甘酒を『麦あまざけ』と称し、野良仕事を終えた後に、お茶代わりに飲んでいた文化があったそうです。

 

甘酒祭の感想

5年前の2014年7月27日(日)、まだ甘酒探求家として活動する1年以上前に初めて甘酒祭と言うジャンルの奇怪な祭りがあることを知って興味深々に見に行ったのが出合い…今思えば、初めて見た甘酒祭が甘酒をぶっ掛け合う激しい祭だったから、いつまでも忘れられずにいたのだと思う。

そして、いつか…甘酒を掛け合う人になってみたいと夢見ていた…

『(ΦωΦ)フフフ…やったぜ…ふんどしデビューだ!ひゃっほーーーー!』

やってやりましたよ!ついにやってやりました!!

そんな、2019年7月28日、初夏の日差しに照らされた甘酒祭りの記録を追記します♪

 

2019年7月28日の猪鼻熊野神社の甘酒祭の感想

2019年熊野神社の甘酒祭の幟

本日は2019年7月28日(日)、梅雨はまだ明けておらず台風6号から変化した熱帯低気圧が通り過ぎたばかり。でも青空が気持ちよく除き強い日差しが差す非常に蒸し暑い真夏日な陽気…気温は33℃。
参道入り口の猪鼻甘酒こぼし保存会の幟(のぼり)が爽快にたなびく…

2019年熊野神社の甘酒祭の鳥居

 

 

鳥居から境内に向かう階段は相変わらずの急勾配!ここは甘酒こぼしの際に是非一度見た方がいい名所となる

 

 

2014年熊野神社の甘酒祭の甘酒の滝

 

 

勝手に名付けていいのであれば、『甘酒の滝』… この甘酒こぼしの日、甘酒こぼしをしている間にしか現れない… つまり、年に一回30分しか出現しない大変レアな滝なのです!
※2014年の様子

 

 

 

2019年熊野神社の甘酒祭の社殿.jpg

境内に入ると、広い敷地に、さらに少し上に上がる高台があり、ここに社殿が建っている。

2019年熊野神社の甘酒祭の甘酒かきこみ所 2019年熊野神社の甘酒祭の池

甘酒は広い敷地の右端に目をやると大きな溜池があり、その目の前の『甘酒かきこみ所』に置かれた470ℓ容量の大樽で造られる。多分、この時で180~200ℓ位だろうか…
9時半ごろから12時頃まで、こちらで甘酒を頂けます。

2019年熊野神社の甘酒祭の三種の神器
甘酒を掛け合う儀式である『甘酒こぼし』は一般の方も参加することができ、9時から10時の間に参加受付(定員60名ほど)を行っている…ここで、参加費とわらじ代4000円を納め、ハチマキ・わらじ・ふんどし(+祭りの最後にお札も戴ける!)を手渡される。
※ハチマキ…わらじ…ふんどし…3種の神器や…参加者はこれを装備して甘酒こぼしに挑むことになります(笑)

2019年熊野神社の甘酒祭の式典

 

式典は10時頃から約30分執り行われます。

終えると神前にお供えした甘酒は大樽の中に移され、ここで神様の力を宿した甘酒となるのです。

2019年熊野神社の甘酒祭の式典後の甘酒を大樽へ

 

10時40分頃、直会では氏子の方々、そして甘酒こぼしに参加する方々が集まり、神前に供えていた日本酒と餅を分けて頂き弁当を食べながら話合う場が設けられる。

当社の甘酒祭は13時開催の『甘酒こぼし』が非常に有名で、10時頃に行われた式典はあまり知られていない。本来はこの式典が主の行事なのですが、甘酒こぼしが有名になり、多くの人がそれに着目するのも時代の流れと受け入れていると語られました。

継続していくためにも他県の方の参加を歓迎しており、また他県から参加者の方も非常に活き活きとして楽しそうだ。遠くからは三重県から甘酒を掛け合う為に来たのだという人もいたし、京都からのツアー客の方々も多くいた。

少しでも長くこの祭りを後世に残していけるように…そんなお話を伺うことができました。

直会を終えると12時過ぎとなり、甘酒こぼし参加者は、ふんどしに着替え始める!何人か詳し人がおり、ふんどしの巻き方とわらじの履き方を教えて頂いた。
ふんどしもわらじも初めて身に着けた…わらじを始めてはいて感じたのが、足の平をきっちり守り、指は柔軟に土を踏めるようになっていて非常に動きやすい!!

※以後、甘酒こぼしに参加する為、自分で写真が撮り難くなる…

2019年熊野神社の甘酒祭の甘酒こぼし間近

12時40分頃、甘酒かきこみ場に安置していた大樽の中身を『甘酒こぼし』用の大樽に流し移し、甘酒を掛け合う場に移動させる…た、樽が重い…そして夏の日差しがちりちりと肩を焼いて暑い…

2019年熊野神社の甘酒祭の甘酒こぼし間近13時に雷鳴(花火)が鳴ると宮司さんが祝詞を読み上げ、天狗が舞い、そして火蓋が切って落とされた…水槽に置かれた桶に水を汲み、大樽の中に水を満たし、一杯になったところで、甘酒を汲み上げ、空に弧を描くようにまき散らす!

『おらーーー』『よいっしょーーー』などの掛け声とともに甘酒がまき散らされていく…海の中で波にもみくちゃにされているかのようにバシャバシャと浴びる甘酒。

大樽の甘酒は減っては水を足し、減っては水を足しと一向に減る気配はない。

甘酒もだいぶ薄まって、透明感が出てきたところで、樽を倒して転がし回る、回る、回る、水がぶっ掛けられる、回る、回る…なんか頭が回るほど回したら、樽を溜池に落として水を掛けまくって『ハイ、おしまい!』と言った感じのスピーディさ。

※遠くから雷鳴が聞こえていた…
※甘酒を浴びた後ですが、まるで温泉に入った後であるかのように肌がすべすべ(笑)

その後、全員で熊野神社に並び、神様に甘酒こぼしの終了を告げる… 13時半頃、これで祭は全工程を終えた!

ふんどしの一団はその後、境内から降りる階段を下り、大きな幟(のぼり)を降ろす…祭りの参加者が片付けまでもスピーディにできるようにキチンと考えられており、継続の秘訣はここにもあるな…とシミジミ。

片づけを終えて境内に戻ると、見学客は蜘蛛の子を散らしたようにいなくなり、雷が鳴り、雨がパラパラと降る中、身支度を整えて、会場を後にしました…

 

2014年7月27日の記録~甘酒祭を探すきっかけとなった記念すべき日~

2014年熊野神社の甘酒こぼし

 

 

大きな木桶に入った、ほんのりと酸っぱい香りのする甘酒を祈願の後に、小さい桶に取ってはぶっ掛け、取ってはぶっ掛け、近くの溜池の水も一緒に撒きまくる。

 

 

 

神社の敷地内に入る直前の長い階段は、甘酒と水とおじさんたちの汗と、みんなの厄を混濁し、激しく流れ落ちる。【2014年の甘酒の滝…今年も見たかったがふんどし団の一員となっていたため見れず】

2014年熊野神社の甘酒こぼしの樽転がし

 

桶の甘酒がなくなるとみんなで木桶を大玉転がしの様に、持ち上げ、転がし、ワイワイやったのちに終了!

なんとも不思議なお祭りですが、これが実にいい味を出していて素敵でした。

 

間庭の甘酒まつりの情報

開催日:7月第4日曜日(10:00〜式典、10:40~直会、13:00〜甘酒こぼし)
※甘酒こぼしは一般参加も可能で、受付は9:00〜10:00、定員60名、参加費とわらじ代4000円(わらじ、ハチマキ、ふんどし、直会への参加券を頂く)
※祭りの詳細は秩父市役所荒川総合支所(0494-54-2114)にてお問合せ下さい。

最寄り駅(アクセス):秩父鉄道本線「三峰口駅」から1.2キロ(徒歩16分)

住所:埼玉県秩父市荒川白久1787

秩父市役所:http://www.city.chichibu.lg.jp/4349.html(秩父観光なび:https://navi.city.chichibu.lg.jp/p_festival/11816/

秩父観光協会:http://www.chichibuji.gr.jp/event/amazakematsuri/

日本観光振興協会:http://www.nihon-kankou.or.jp/saitama/detail/11368ba2210126758

 

参考文献

・秩父の民俗/幹書房/著・栃原嗣雄(p132-137)


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